スパッと解釈なら、彼女にはかなわない

男と女の文芸評論が、これほど違うとショックだったのが斉藤美奈子さんのデビュー作でした。

題して「妊娠小説」。

男の評論が、小説を読むことから始まって、先行評論にあたったり、時代をさぐったり、作家の交友関係を調べたり、イディア概念に落とし込む。それこそ、地味で抽象的な言論展開。

美奈子女史の評論は、違います。

まるで、評判のテレビドラマを給湯室でうわさするような調子。あるいは、「家政婦は見た」ことを、近所の奥さん同士でしゃべるよう。

「名作うしろ読み」中央公論新社刊。誰もが、1行目に注目しますが、彼女は最終行から文芸を論じてみた。

7章建てです。青春の群像、女子の選択、男子の生き方、不思議な物語、子供の時間、風土の研究、家族の行方。

青春の群像のトビラの1行。

失恋はする、悩みはつのる、すぐ死にたがる。青春ってヤツはもう・・・・・。

このトーンに、女史の軽快で生活リアルが滲み出てるでしょ? 男評論との違い。

ところで、これだけ鮮やかに処断できるのに、どうして文芸が必要なんだろう。ウジウジとした男、抜け目ない女が、彼女のごちそうなんだろうか。

消しゴム版画家のナンシー関嬢と同じような鋭さが光ってたよ。

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