遊戯三昧、自由自在に徹する画家
浅草の雷門を真っすぐ浅草寺に向かう。
仲見世が終わったあたり、左側に伝法院があります。左折した通りが伝法院通り。上をみると、地口行灯(じぐちあんどん)がならんでます。
地口は、もともとあることわざ・成句に、音が近いけど違う言葉に作りかえる遊び。絵も添えて行灯にし、お祭りの時などに道に立てた。
・似た者夫婦 → 寝たもの夫婦 で、寝てる姿の絵
・おやおや、嘘ばっかり → おやおや、渦ばっかり で、ウズがとりまく絵
彼の名前は知らなくても、装丁や挿絵を見たことはあるでしょう。それこそ、たびたびお目にかかる。画業50年を記念して出版された本です。
僕が知ったのは、野坂昭如の小説挿絵で、逆算すれば彼の画業10年前後のころ。すでに名人の腕で、今に変わりません。
まず、ユーモア。クスッとさせる機智・頓知。
次に、デザインセンスのすばらしさ。レイアウト・強弱のつけかた・ホワイトスペースのとり方。
そして、墨線の流れと濃淡。屏風絵、大津絵、草紙絵、山水画、禅画の現代版と思うようになりました。
民話・昔話を描く画家は、たくさんいます。筆で、切り絵で、貼り絵で。
でも、彼ほど包容力のある絵を描く人は少ない。たいがいの画家は「うまいだろぅ」という絵を描くのでね。
今後の希望は、本のための絵ばかりじゃなくて、地口行灯に絵を描いてほしいこと。そのためには、全国の寺社が「NPO地口行灯」のために結集しなければいけない。
そういう僧侶・禰宜さん、いないのか?