どこかに、朗読を聞いて育つ少年少女

出久根達郎さんが1993年に『佃島ふたり書房』で直木賞を獲った時、「ずるい」と思いました。

古本屋のおやじが、古本のことを書いて賞をもらうなんて。その頃は、とにかく古本漁りに邁進していて、いつか古本屋をやりたいと燃えてましたから、なおさら。

羨望とジェラシー。

原稿用紙が買えなくてチラシの裏に文字を書き付けてた、なんて文章修業を語られると、こっちの気合いの無さを指摘されているようでもあった。

彼は、茨城から集団就職で月島の古本屋に就職。毎日、寝しなに辞書を読んでいた。店の主人からは、「日本人作家を、1人1作読みなさい」と言われる。

商品知識を得ることが、即仕事&娯楽。趣味を仕事にしない、なんて奴バラに聞かせてあげたい。

じ〜ンと来るのは、お客さんの諸相。

月遅れの大衆雑誌を買いにくるおじいさん。講談だの浪曲だのでなじんだ節をつけて朗読する。まわりには、せっせと手を動かして内職する家族。

僕の小学校時代も、家で内職やってました。今、内職ってあるのだろうか? 段ボール何箱分かを加工して、渡すと引き換えに、次の材料を受け取る夕方。

今度は、僕が朗読するおじいさん役。回りで、精を出す息子夫婦と孫6人みたいな風景。

やりたいなぁ。

クインシー・ジョーンズ75歳のステージ。