ジャンヌ・モローは、地球の人間国宝
パリっ子。男ならパリジャン、女ならパリジェンヌ。
これがバルト三国のエストニア女になると、エストニエンヌ。Estonienne。だよね、フランス語のわかる方?
原題「パリのエストニエンヌたち」が、邦題になると「クロワッサンで朝食を」。鼻白らむよなぁ。パリ = お洒落で、クロワッサン。しかも「ティファニーで朝食を」風をなぞる。
何そんなにシャカリキに主張してるの? とたしなめる、そこのあなた。まぁ、聞いてちょうだい。
すでに在日外国人は大勢いるのに、明治時代と変わず「ようこそ、異人さん」感覚から抜け出せません。同時に、外国滞在の日本人を「才能ある、がんばる、自分探し」の人と捉える。
そこそこ自由で食える日本は、移民・移住がわからない。ソ連にいじめ抜かれたバルト三国の人々が、自由や仕事を求めてフランスに移住することがピンと来ないから、「クロワッサンで朝食を」なんぞと甘っちょろい邦題になってしまう。
という背景で見ないと、この映画はつまらない。富裕で頑迷な老人が、いつしか介護する人と和解していく物語は、くさるほどありますから。
ところが移住先にも普通の人生がある。つまり「才能ある、がんばる、自分探し」じゃない人生を描いているところが、この映画のいいところ。
ジャンヌ・モロー、85歳。「死刑台のエレベーター」の若妻を演じ、マイルスのトランペットに合わせて視線を泳がせるシーンは、僕の「映像遺産」。
今回も、家政婦アンヌがさまようシーンにトランペットが流れてました。
「字幕屋のニゴンゴ渡世奮闘記」太田直子著。
1秒4字で、絶妙な字幕をつける仕事。ルールを教わる。外国語は< >でくくる。今回は、基本がフランス語。エストニア語のところは< >だった。