流してみてから、テーマが発見される

3・11震災の年、川崎市議会選挙に出馬した山内和彦、通称「山さん」は今、本業の切手コイン商にもどったんでしょうか? 

7月6日に封切られた「選挙 2」の主人公。当日は、映画の最終シーンでやった、唯一の駅頭演説防護服スタイルで、観客とやりとりしてました。

2回目の出馬時は無所属。初出馬は自民党公認で、映画「選挙」にもなりました。この時は、当選。ところが、当確が報じられても本人は自宅にいたので、選挙事務所でバンザイと盛り上がれない。

選挙事務所では、「世が世なら、切腹ものだ」といきり立つ。こういう想定外シーンこそ、「観察映画ならでは」と書く想田和弘監督。

「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」講談社現代新書刊。

巨匠ワイズマン監督を敬愛する。ナレーションを入れない、テロップも無い映画。説明しないんです。想田監督がなぜ巨匠に傾倒したかといえば、それまでやってきた仕事が、あまりに台本優先の予定調和ドキュメンタリーだったから。

かつて、NHKで「ニューヨーカー」という番組がありました。たとえば、バリバリ金満ビジネスマンが登場するシーン。ここは、黒塗りのリムジンから降りてほしい。

ところが本人は、くたびれたクルマで登場。脚本家は困る。てな現場を監督していると、「俺は、こんなことやりたくて映画を勉強したんじゃない」となる。

設定されたテーマや台本やわかりやすさを捨てて、どうなるかわからないドキュメンタリーを目指し、すでに国際的に評価され始める。

思想を語りますが、機材や撮影・編集技術、そしてお金のこともフランクに語る。ゆくゆく動画をやりたいから助かる。

フィルムがデジタル化されて、シロウトでも入りやすいことがわかる。でも、撮影素材を20〜30分の1に編集されたものが、実際に上映されるとは。ほんとに手間ひまがかかるんだな。

今まで、映画監督の本はほとんど挫折してました。ストーリーを語らないので。あたりまえか。でも、作業に興味を持ち出したので、これからは念入りに読めるはず。

だ。

ルーシー・ローズ