ガソリンの虫が押し寄せてくる
アパートにはベランダがない。雨は直接、窓から吹き込むので対応には体が反応する。
室内のキャビネットの上に、新聞を重ねて敷く。カーテンは濡れるが、窓を閉めるより風を通したい。18日、突如ド・ドーンと来たから、いつもの行動。
雷、来襲。
「おや?」。降って来ない。雷雨じゃないの? 音、各種あって、打ち上げ花火だったのだ。多摩川の花火大会。用賀駅の隣、二子玉川駅でやってる。音はすれども、3階だから肝心の花火は見られない。
ダ・ダ・ダーン。バラバラ・バラバラ。
音でだいたいカタチが想像できる。前に、花火の本を編集した。知り合ったのが蔵前にある長谷川商店の二代目若旦那。
双方、根っからの花火小僧。でも、彼は商売ものを親の目をかすめて遊んでいたから、経験量が違う。商売を継いで付けた肩書きが「花火コーディネーター」。
プロローグから段々もりあがって、観客の期待を集めてハデなもの、夜空に万華鏡を拡げて、最後は「もっと見たい」気持ちを断ち切るように終わる。
これ、おもちゃ花火だから、学校のグラウンドなどでやる。仕掛け花火の現場には出入りしない。どうも、業界はハッキリ分かれているようだ。
コンサートでCDが売られているように、仕掛け大会でもおもちゃ花火を売ればいいのに、と思うのはシロウトの考えなんだろう。
キーン、ドドーン。
花火大会といえば、屋台。こわいよねぇ。京都で、ベビーカステラ屋が大爆発。発電機にガソリンを注ごうとしたら、携行缶から霧状に噴出。鉄板の炎に引火。その後、さらにガスボンベに引火。
高温で気化したガソリンが、缶の中で逃げ場なし。減圧用ネジを空けて飛ばさなきゃいけないのに、そのまま注いだ。
想像するんだ。ガソリンの粒。トゲトゲ体型、目つき鋭く、手にヤリを持ち、突撃する凶悪軍団。痛み、かゆみ虫からの引用。落語でいえば、悋気の虫。
これが、誘われるように火になだれうつ。飛んで火に入る夏の虫。
花火小僧、転じて屋台小僧願望。火を扱うこわさを自覚したので、射的屋くらいにとどめておきたい。