違和感どおしで、いきものがたり

表参道にある「古書 日月堂」は、その筋には知られてます。

かつては、大岡山に店がありました。青山に引っ越して10年は経ったでしょうか。古書の数では、もっと大きい店はたくさんある。むしろ、小ささで競う。

置かれているものが違う。書籍もあるが、雑誌・布・ラベル・カタログ・アルバム。その他、いかにも店主・佐藤真砂さんらしい品々。

行けば、「バカでしょう? いいでしょう?」と笑顔で新入荷をすすめる。

古書会館で週末展覧会にも出品し、デパート古書催事にも出る。ここまでは知ってましたが、アンティーク屋にまで出店していたとは。

「もう6〜7年前から、佐藤さんの商品を置いてますよ」と、店員さんの説明。目黒通りのGEOGRAPHICA

1920〜30年代のVogue誌があります。ファッション・プレートもある。確かに古書屋らしいことをやってる。けれど、ほとんどは骨董屋に近い。アンティーク文具、絵はがき、革かばん、ワインのキャップコレクション。

ガラスペンや組み立て前のボール紙の箱。驚きません。前に、活字も商ってた。おなじ金属つながりで、今度は機械部品ときたもんだ。

歯車とか、ギアとか。それが、工場の部品棚のしつらえに納まってる。いいよなぁ、「ざます」のおば様相手の店に、「ごんぞう」の商品。

ニューヨークの古道具屋で、大量にガラスのフィルムを買ったことがある。映っているのが、工場の写真。1930年代、機械の時代の写真。

だから、部品というのは捨て置けません。フェチ。大人たちが働き、昼休みに旋盤で切削したクズを拾い集める心境。

役にたたない、本来とは違う意味で見る。妄想癖は、男に多い。真砂さんは、女です。来し方、違和感のある人生だったろう。違和感どおしの、友だち。

だから、定期的に会うようなことはしない。

いきものがたり