イチローのように静かなペットボトル
イチローが4000本安打を記録して、クーパースタウンの野球殿堂入りが確実になった。
ってニュースが、「偉業を認める・認めない」論争と一緒にやってきた。メジャーはレベルが高い。日本の野球なんて高校野球程度だからって。
これ、立場を変えるとよくわかる。韓国・台湾リーグと通算して日本のプロ野球で4000本ヒットを打っても「認める・認めない」論争になるだろう。
論争した時に、「認めりゃいい」というのが僕の感覚。サッカーでも通算ゴール数で同じことを騒いでる。
もともと野球には興味ないから、どれほどすごい数字かわからない。でも「2倍の8000回以上は、悔しい思いをしてる」という彼のコメントを聞いた時に、にわかにリアリティが出てきた。
3割りバッターだから、これですむ。並の野手なら1万回以上の打席で苦虫を噛む。
金魚屋と文房具屋の間に本棚があった。一冊50円。
「イチロー革命」早川書房刊を入手。ロバート・ホワイティングが著いた。戦後のどさくさに暗躍したワルを「東京アンダーワールド」で活写した。
最初に著いたのが「菊とバット」。ニューヨークで原稿の売り込みで言われたこと。「売れない本には二通りある。一つは野球の本。もう一つは日本の本。君の原稿は両方に当てはまる」。
ところが、野茂、イチロー、松井と続いて風むきが変わる。取材経費使い放題で依頼されたのが本書。
文具屋にお金を払いに入る。
売り上げを10年以上寄付し続けて、すでに289万円。「家族全員が本好きでして」と若主人。読み終わった本を寄付・処分し、50円で誰かが買う。お金は骨髄バンクに寄付されて、すべてめでたし。
こういう人を、ストリート・ワイズという。知恵者。
イチローが4000本目を打って一塁ベースに立った時、ヤンキースのナインがベンチから出てきた。静かな祝福の風景。
使い古されたペットボトルも静かに立ってた。