ハラスメントじゃなく、マジでやる

新装歌舞伎座は4月に開業したんだね。9月で、すでに半年。大盛況らしい。

有名な場を次々に出すから、誘われて「この場面なのか」とファンになっていく可能性大。Eテレこけら落としの「弁天娘女男白浪(べんてんむすめ めおのしらなみ)」を見る。

白浪もの = 盗賊もの。ならず者を白浪と呼ぶ。悪行が、騒ぐ波に千鳥舞う風景とイメージされて、なんて日本語の翻訳拡張機能は美しいんだと思っていた子ども時代。

ほんとは、中国が語源らしい。

弁天小僧菊之助に、菊五郎丈。「知らざぁ言って聞かせあしょう」。ご存知、女装から男姿にもどって啖呵をきる場面。

そして、白浪五人男が捕り手に囲まれながら、自己紹介をする場面。最初が、悪の親分・日本駄右衛門の中村吉右衛門丈。自らの犯行歴を七五調の名台詞で詠む。

歌舞伎の演目は、ギネス申請しないのだろうか? シェイクスピアには負けるかもしれないが、それに次ぐロングランであるには違いない。納まりがいいマンネリ。

新橋演舞場9月のポスターを駅で見る。松本幸四郎丈「天衣紛上野初花(くもにまごう うえののはつはな)」と「不知火検校(しらぬい けんぎょう)」。

悪の華二輪。同じワルでも、これは街場じゃなくて権力のワル。絢爛ゴージャスでいい。

「天衣紛」は、茶坊主・河内山 宗春の強請・たかり。これが義賊でもあったと黙阿弥が脚色して、今のかたちになる。青山・高徳寺の墓には花が絶えないんじゃないか。

「不知火検校」も、いい。だまし、盗み、人殺し。のし上がって、最後には師匠に手をかける。歌舞伎だから、宇野信夫作。シャープなワル。井上ひさしさん作の「不知火検校」は土着的なワルで、こちらもいい。

ポスターの写真は、蜷川実花。根がハデだから、権勢の不気味さが映える。

m-flo