見落としを説く山口晃さんのヘン

三軒茶屋駅から、住宅街を大きく回って池尻大橋駅に向かう途中にあるのが、世田谷公園。よく、野菜バザーのようなイベントが開かれる。

「勝手に、人形通りって呼んでるの」と、「迷子だっち」が言う。彼女の地元なんだ。

「花笠踊り」と書かれた木の人形が並ぶ。スイッチを押せども、動かない。「今日は、休みなのかなぁ」とつぶやく。

・豆電球がついていたら、下のスイッチを押してください。人形が踊ります。止まったら、豆電球がつくまでしばらく休みます。

地元名物が稼働しないことに、彼女はちょっと残念がる。いいんだって、この手は大好きだから、見てるだけで楽しい。よく見ると、踊り手2列のほかにも司会者がマイクの前に立っている。

太鼓・三味線・笛もいる。

木っ端を切り出して作った「花笠踊り」。ごく普通の家の一部を改造したディスプレイ。

「ヘンな日本美術史」祥伝社刊。

1日のニュースで、本書が第12回小林秀雄賞を受賞した。著者は、山口晃さん。

批評家の王道をいく小林秀雄の名前と、山口晃が結びつかない。なにしろ、「ヘンな日本美術・史」なのか「ヘンな・日本美術史」なのか。どちらにしても彼は「ヘン」が好きで、自身も「ヘンな洛中洛外図」をたくさん描いてきた。

「ヘン」というより、「不思議だなぁ」どうすりゃこのように描けるんだろう? という疑問そのままを作品にするから、見るほうも忘れられない。

してハンサムだから、ますますギャップがあって面白い。

「花笠踊り」はヘンです。思いつのって「作っちゃいまいした」ってところがすごくて、「悪しからず」って挨拶されているよう。

祥伝社書籍出版部の岡部康彦編集長へ、これからもヘンな本を出してください。

ビョーク