「シュタイデルに」と、出版人なら
文学が、Tシャツやトレーナーになって一番似合うのはこれでしょう。ON THE ROAD。
「路上」と訳されたタイトルもあるけど、新訳で「オン・ザ・ロード」になってるかもしれん。1957年の名著。
著者のジャック・ケルアックは、大学時代にギンズバーグやバロウズと知り合って、大いに刺激しあう。どこに行くのかわからないが、どこかへ向かう。
映画にロード・ムービーなるジャンルが生まれたのも、ON THE ROADからではないか?
映画「世界一美しい本を作る男」を見る。ドイツの出版社オーナー、シュタイデルの物語。
出版社が編集を外部に任せるようになって久しい。装丁を含めて造本も、外部。印刷も用紙も、外部に任せる。販売も、流通会社に卸せばいい。
シュタイデル社は、全部自前でやる。
美術品というほど高価ではないが、大量生産する本とは違う。500部とか1000部くらいしか刷らない本を作る。気に入ったモノクロ写真をあしらったON THE ROADを発行する。
発行前に、顧客からの予約で完売。
「ブリキの太鼓」のギュンター・グラスの特装本も出す。写真家ロバート・フランクと打ち合わせして、新しい写真集の打ち合わせをする。
という高品質の本を作るから、依頼はひきもきらず。
ファッションのカール・ラガーフェルドから、コレクションのブローシャーをまかされる。写真が趣味のアラブ王族
から、出版を指名される。
紙やインクの匂いにうっとりする体質の人が見ると、この映画に出て来るサンプル紙の棚、用紙の束、印刷、校正刷りにおぼれる。
「直接会って打ち合わせすれば、2・3ヶ月かかる仕事が4日で終わる」と、旅に出る。
シュタイデルのロード・ムービーだった。