日頃のズレを拡大するミチコ芸
生命保険に入るとか、区役所に何かを届ける以外で、主婦という言葉は書かなくなったんじゃないかな? 言わなくなったし、聞かなくなった。
演芸という言葉も、上に同じ。
死語ではないが、うっすらとホコリがのった売れ残り商品のごとし。
「主婦と演芸」幻冬社刊。
独身でも通用する清水ミチコ嬢の本らしく、微妙にズレてるタイトルに笑う。
お笑いだけど、バリバリのお笑い芸人というポジションではない。モノマネも、彼女よりうまい人はいるでしょう。
なんだかヘンなところは、松尾貴史似。でしゃばらず、さりげなく、キモはおさえる。芸風は「シロウトが、芸能人・有名人を真似ました」テイスト。
本は、彼女が雑誌「テレビブロス」に連載しているものを一冊にまとめたもの。
現場のウラ事情を語る。でも、シロウト目線で出会ったタレントにときめき、感心し、仲良しになるエピソードだから、こっちもうれしくなる。
日常でも、驚く。
・夫と映画館に入る。隣に坐ったOL、コンビニの袋を膝にのせる。ガサゴソ取り出したのは、冷やし中華。
・え、冷やし中華? も1回見ちゃった。しかも、作ってる。タレをかける。ほぐす。カラシを横に付ける。すすってる。
現実は、ネタを超える。笑いたい人は、本を買おう。
・テレビを見てたら、男のアーティストが「しばらくヨーロッパを放浪してた」と言ってた。聞けば2週間だという。「旅行じゃだめなのかしら?」。
・女性タレントも、よく「大恋愛でした」と言う。どこからが大? どこからが並? 私は小?
詰め寄るところは、主婦だった。ミチコ芸の真骨頂。