大正デモクラシー青年の起業

今年の100年前は、大正2年。

大阪で薬種商店を開いた浦上靖介さん。これが現在のハウス食品で、創業100年。国民食のカレー史、ここに始まる。

出版界では、岩波書店が創業100年。

岩波茂雄ミネルヴァ書房刊。

ミネルヴァ日本評伝選の1冊。2003年に発刊してから10年、すでに100人以上が登場している。完結するまでには、あと20年以上はかかるのではないか。

会社にとっては、腹をくくった大事業。木を育てるのと一緒で、岩波書店に似てる。

岩波茂雄」を読んでると、彼がいかに使命感をもって創業したかがわかる。一高・東大哲学科というキャリアにうなずく。

とはいえ、順風満帆の青春だったわけではない。浪人・引きこもり・落第・除名も。この辺は、もっと詳しく知りたかった。

時は、日英同盟日露戦争伊藤博文暗殺の時代。野間清治が後の講談社を創業した頃でもある。

女学校の先生をやめて、神保町に開いた古本屋。看板の「岩波書店」は夏目漱石の筆。柱には「正札販売厳行」とあって、値切る森鴎外に「あなたまでが」と叱りつける。

スタートが古本屋というエピソードが有名すぎて、しばらくはそれをやっていたと思っていたら、創業翌年には、もう出版事業を始めていた。漱石の「こころ」。

岩波といえば、教養主義。では、当時の日本人が避けていたかといえば、欲していたんだ。

大正14年、多額納税者の出版部門第3位に岩波茂雄とあった。

ミネルヴァ日本評伝選は、どんな人でも「あらまし」が読めるから助かる。

マイケル・フランクス