想像力が、夢の神話をつくる
そりゃ、理想より現実のほうが全然おもしろい。
極楽より地獄めぐりのほうがワクワクする。マルキド・サド侯爵も「美徳の不幸 悪徳の栄え」と繰り返し言ってるしな。
生涯で、初めて理想郷の本を読んだ。「ユートピアの歴史」東洋書林刊。
なんとなく風薫り、花の平原に森が開ける。そんな自然系のイメージがあった。違うんだね。人間がイメージした理想郷は、もっと社会学的なものだった。
制度的であり、組織的に理想を実現することに気を砕く。
神話の時代から宗教の時代、そして実証的な科学の時代になっても、連綿と彼方に向かって「〜すべき」となる。
トマス・モアが「ユートピア」を著き、スイフトが「ガリバー」を著き、アメリカ新大陸へ、共産主義へ、テクノロジーの近代へ。SFが生まれ、映画がフロンティアを描く。
人類が考えた「ここではない、どこか」は、「どこにもない場所」でもあった。そのカタログ。
町では、営業中のユートピアがあった。ナイトクラブ・ユーフォリアeuphoria幸福感・高揚感。ちょっとくたびれているが、これくらいが、ちょうどいい。