旧世紀で未来世紀のような植物
5年前に写真集「ひろしま」を見た。被爆者が着ていた衣類の写真。
辛うじて衣類になっているが、正確には繊維の状態。これが爆風から体を守った唯一の薄物であること証明している。
原爆資料館には、溶けた金属やガラスが展示されている。熱を視覚化してる。石内都さんが撮影した繊維は、皮膚と同化したことを暗示させる。
これは、男の写真家にない視点だと思った。
スキンケアって、ほとんど女の関心事でしょ? 過去の作品をめぐると、彼女は一貫して皮膚に注目した写真を残していた。
最新作「sa・bo・ten」平凡社刊も、皮膚だった。表層の怪異。
サボテン栽培をしている会社を訪ねて、異形を収めた。
マシュルームに似てるサボテン、珊瑚に似てるサボテン。
陶器のよう、岩石のよう。昆虫の触手、帽子、鶏冠、角。象やサイの皮膚。木の実、葉。砂丘、山脈、噴火口。
ただならぬ、形と色。なにか、予想してない事件が知らない町で起きたような。
現物は、広島・叢、福島・グランカクタス、千葉・二和園にある。
サボテンではないけれど、公園の観葉植物で見つけた異形。太い幹に、腫れ物のような点々。
遠目には、虫が地上から昇っているように見えた。植物って、予定調和的な、あってほしい姿をどんどん裏切る。ジュール・ベルヌの冒険風景に紛れ込んだような。
怖いけど、凝視する。