有馬稲子、ねこちゃん若い

というわけで、神保町シネマでやっていた小津安二郎監督の「東京暮色」を見る。

95席で、90番目の整理番号。50分前に切符を買って、ギリギリ入場。20代から60代まで平均したお客さんだった。

僕が20・30代だったら、「古くさくて」決して見なかったであろう小津映画。どこが若者を惹き付けるのか。

座席は、最前列しか残ってない。スクリーンを仰ぎ見ると、ローアングルがより強調されるのがわかった。

外国人監督が、小津映画に惹かれる理由もわかった気がする。

それは、自国より強調されて感じられる異国のノスタルジー。トレナトーレ監督「ニュー・シネマ・パラダイス」が泣けるのは、失われたイタリアを日本人が場違いなほど感じるのと一緒じゃないかな。

それと、笠智衆。彼の役どころは、いつも「無色透明」。

回りの配役が、いろいろな事情をかかえ、動いている。彼のセリフの究極は「そうかぁ、そうだったのかぁ」と、常に起きたことを追認する。

素朴で無口で善良な「かつていた日本のお父さん」という、あってほしい姿。

それが誤解の始り。ストーリーの進行役であり、整理役を笠智衆は担っているのではないか。誰もが考えつかなかったキャスティング。

今回、生誕110年ということで、サイレントを含め現存する全作品を上映中。

アンケートのベスト5が発表されていた。「東京物語」「秋刀魚の味」「麦秋」「晩春」「秋日和」。その他を含めて見てないものが、圧倒的に多い。

山田貴子