ハサミ持って、鏡の前に立つ彼
明治維新の立役者、西郷さん。彼に比べればダンチで人気がないのが大久保利通。
朴訥な西郷どん、怜悧な大久保さん。この印象は、もちろん写真から受けるもの。会ったことないし、喋ってるのを聞いたこともないからさ。
加えて、両者の国家構想・政策ビジョンにいたっては。
「大久保家秘蔵写真」国書刊行会刊。
利通 → 利和 → 利武 → 利鎌 → 利泰に至る当主の系譜。侯爵家だっただけに、残された写真資料も膨大だ。
明治・大正・昭和戦前期の貴顕をあらかたカバーする内容。撮影場所も、これまた摂関家・華族様ロケーション。
霞ヶ関の私邸、芝二本榎、丸の内、麻布、品川御殿山、駒場、青山(外国は除く)。
一番おもしろかったのは、利通ヒゲ史。
・明治元年 チョンマゲは結ってないが、ヒゲも無い
・明治4年 岩倉使節団でサンフランシスコ着。鼻下ちょびヒゲ
・明治5年 もみあげが顎まで届く。鼻下三角形に整う
・明治7年 頬あたりのヒゲ、長円形に大量に群茂する
一貫して伸ばしたわけではない。かみさんから「やりすぎなんじゃないの?」と言われたのか、年によって調整している。
歴史の教科書でおなじみの写真を覚えてますか? 口の両端から、正三角形のモジャモジャが下がっている。ヒゲのピーク。あれは、明治6年だった。
明治10年、第1回内国勧業博覧会開会式の時は、だいぶおとなしいヒゲになってる。これが、大久保家に残された最後の写真。
暗殺されたのは、明治11年だった。