臆病で女好きの八等文官

八等文官のコヴァリョフ、ある朝目覚めると鼻がなかった。

やっと試験に合格し、女の子にもてそうなのは武官だから、八等文官に相当する少佐と名乗っていた。その唯一のプライドも、鼻が紛失したとあっては身震いする。

あわてて町に鼻探しにでかける。

・鼻は、金糸の刺繍つきの制服を着て、襟のカラーは大きく立っていた。彼は、なめし皮のズボンをはいていた。

やっと見つけた鼻。気が狂いそうになる。鼻が歩いている。しかも、

・羽飾り付きの帽子を冠っているということは、五等文官。少将相当官ということになる。

鼻の分際で、俺をさしおくとは。

後を追跡すると、鼻はカザンスキー大聖堂に入って行った。幸い、聖堂内で後ろ姿を見つけることができた。近づいて、咳払いをする。

・もしもし、貴殿・・・

・何か御用ですか、と鼻は振り向いて答えた。

・どうも、わたしとしては、貴殿・・・突然あなたを聖堂の中で発見したのですが、よろしいでしょうか・・・

・失礼ですが、よろしいでしょうかと言われても。

「鼻」未知谷刊。

ニコライ・ゴーゴリの「鼻」って、こんな話だったの? コントじゃないか。

秋に、メトロポリタンオペラの映画版広告を見た。そこに
」があった。ゴーゴリ原作。ショスタコービッチ作曲と書かれてた。

掘り出し物が、たくさんあるんだなぁ。