ケルテスも読み人好きだった

ブック・カフェは繁華街やお洒落な場所ではなく、私鉄沿線の、駅から15分くらい歩いた場所にあるのが似合う。

店主は、だいたい30〜40代。学校卒業後、勤め人をやったけど「自分の生き方」を求めて開業したような気配の人が多い。

勝手にこっちでストーリーを作っているから、ブック・カフェを見つけると、界隈まで「地域の生き方」を模索している町のように感じてしまう。

町がそうなら、店でコーヒー飲み飲み本を手にしている客は、なおさら「至福の自分タイム」を過ごしているように見える。

「読む時間」創元社刊。

人が本を読んでいる姿が好きで、僕は写真をよく撮る。アンドレ・ケルテスも同じだった。

ガラス乾板の時代からハンガリーで写真を始め、パリ・ニューヨークに移って報道写真家となる。故郷では、本屋の息子だった。

移民には、本が心のパスポートだったか。

本を読む人々の写真を撮れば、この町は、この空気はハンガリーと同じこと、と。

ブック・カフェで見かけたヘルムート・ニュートンの写真集。彼は、ドイツ生まれのユダヤ人。

もちろん、少年の目は家族受難を見た。一方、彼のゴージャスなヌード写真は、ナチデザインが含んでいる意志の怜悧さを投影しているようにも見える。

僕は、日本晴れの下で「至福の自分の生き方」をしている写真を撮る。

ミクローシュ・ペレーニ