精神が、国の体制になると
前に「ユートピアの歴史」という本を読んだ。
トマス・モアの「ユートピア」から始まって、「宝島」「ガリバー旅行記」などの他に、マルクスとエンゲルスが書いた「共産主義者宣言」があった。
・理論はひと言に要約することができる。すなわち、私有財産の廃止である
共産主義が、ユートピアを目指したものだったとは。虚をつかれた思いがしたので、また読んだ。
今では、すっかりアナクロなテーマになってしまった共産主義。骨董品扱い。
1840年代にコミュニズムという言葉が、パリで生まれる。社会的・経済的不平等が、主に所有物の不平等からうまれるのなら、それを解消すればいいというアイデア。
紀元前7世紀から、繰り返し西洋思想史にはあったのだ。
本は、2つの理由で失敗を語る。
平等を管理するためには、平等から頭一つ抜けた特権階級が必要だということ。管理するのは、官僚機構。
「同志○○」と呼びかけあう、疑心暗鬼の連帯感。これって、人工的でしょ。
も一つは、民族・領土的野心を忘れることができなかったこと。簡単に、ナショナリズムやファシズムに結びつく。
血は水よりも濃い、ってことか。
著者のリチャード・パイプスさんは、レーガン大統領時代にソ連・東欧問題のアドバイザーだった人。大統領が「悪の帝国」発言をした時、スピーチ原稿を書いたのは、彼なのかもしれない。
あの時は、あまりにあけすけな言葉で驚いた。
平たくいえば、「皆んな一緒に貧乏になろう」と強制するのが共産体制だろうか。「誰でも金持ちになれる」幻想を振りまくのが資本主義。
どちらも、「全員が」を目指すことが気に入らない。
ユートピアは個人史の中にあって、ちょうどいい。