一段落が終わったら一悶着
まるで、英語の俗語辞典を読んでいるようだ。
Gは、ギャング。ヤングGは、駆け出しのギャング。OGは、一人前のギャング。
友だち・仲間を表す言葉は、バリエーション豊か。マンとかマイマンは定番。
他に、こんなのがあった。カズ、ホミー、ベイビーボーイ、ドゥドゥ、ドーグ、ブロ、ブー、ブルーサ。
加えて誰もが、あだ名でも呼び合う。
フッド/強そうな奴、ブリーチ/漂白剤、リブ/あばら骨、フォーティ/大酒飲み、フィフティ/超大酒飲み、ギズ/精液。
そして著者アヴィ・スタインバーグは、受刑者からブッキーというあだ名をもらった。
「刑務所図書館の人びと」柏書房刊。
正統派ユダヤ教徒のコミュニティでは、法律家か実業家か医者になる見込みがなければ、大学院に進むらしい。
正統派ユダヤ教徒の好青年は、ハーバードを卒業して新聞社の死亡記事をフリーランスで書いていた。次第に孤独になり、社会から切り離される気分になっていく。
「あなたと一緒にいると、ひいおばあちゃんを訪ねてる気分になる」と女同僚からも言われる。
それに、原稿料は安いし、安定もしない。医療補助は受けられないし、生活保護申請直前。
ふんぎりがつかないまま、友だちの職探しを手伝っているうちに求人広告サイトで見つけた一行。
・ボストン 刑務所の図書室司書 フルタイム 組合加入可
好奇心をかりたてられ、即問い合わせをする。
まるで、映画の出だしのようでしょ? 本人が、刑務所に就職してしまったのだ。
そこは、朝一番で押し寄せて来るあだ名民族の大移動でもあった。
フィリップ/フィリピン系、リルハイチ/ハイチ系、SWI$$/スイス系、Pリコ/プエルトリコ系、フレンチー/フランス系、ターク/トルコ系の面々。
たちまち、医療ドリームチームの世話になる。アレルギー専門医、伝染病専門医、眼科医、皮膚科医、整形外科医、カイロプラクター。
仕事を仕事として割り切れない性格だから、シリアスとユーモアが混じり合う。
※豆知識
受刑者の中で、いちばん司書に向いているのは、ピンプ/風俗の男らしい。