自著装丁をした西野嘉章さん
印刷博物館で、「世界のブックデザイン」を見る。
ライプツッヒ・ブックフェアやコンクールで選ばれた美しい本が約200冊。装丁や造本技術の世界水準が一堂に会したので、参考になる。
日本人受賞者のトークイベントもあった。
「われた魯山人」フォクシー刊。
手掛けたのは、デザイン会社モーメントの2人組。この会社は、店舗やディスプレイデザイン、建物のサイン計画もやる。造本は、話があってから10年越しに完成した。
魯山人作の割れた茶碗。それを金つぎで復元する。金つぎ模様をヒントにしたカバー装丁は、展開するとポスターになる驚きの仕掛けがあった。
「アルケオメトリア」。これは、東大博物館の展覧会の図録。受賞者は中野豪雄さん。
考古遺物や美術工芸品は、放射性炭素の含有率に規則性があるので、年代を特定できるのだ。科学の目が透視した遺物や工芸品の会場空間は、さぞや美しかったろう。
「浮遊的前衛」東大出版会刊。
受賞者は、東大博物館長の西野嘉章さん。あいかわらず、ダンディだった。
上から下まで、お洒落。さすが、日本博物学界のアート・ディレクターだけのことはある。東京駅前のインターメディアテクは、この人の思想なくしてできない施設だ。
印刷機は、本番の印刷前に試し刷りをする。発色を調整するのだ。それをヤレ紙という。
「大量のヤレ紙が廃棄されるのを見て、もったいないと思っていた」彼。それを印刷所からもらい受けて、封筒を作った。
インターメディアテクのミュージアムショップで売られていた封筒は、それだったのだ。
以前に買いましたよ、あまりに美しい封筒だったから。
「時代の積み重ねに生き延びる装丁をしていきたい」。本を建築の長さで考えていた。