500アタマ以上を覚える

テルマンが、宿泊客の名前と顔を一致させてる話はよく聞く。それが床屋さんでもあった。

「半年前のお客さんの髪型も覚えてますよ」。プロフェッショナルなんだ。僕が通ってる1000円ヘヤカット店主。

いつも感心していた。

先客がいて、なにげに客との会話を聞いていると、彼はどんな話題にも付いていける。それが、本業のことともなれば、観察眼・記憶力はさらに研ぎすまされたものなのだ。

客の服装で、どんな髪型を所望してるのかがわかるのだ。

ということは、ファッションをヘアスタイルと洋服の関係でパターンが貯蓄されてるってことだろう。

お客が「いつもの」と言っただけで、いつものようなカットをするというのもすごい。

なじみ客が、500人を超えるんだよ。その「いつもの」を覚えてる。

仕事人で共通するな、と思ったのは「結論、先にありき」。

客が坐る → 「いつもの」と言う → 最終スタイルが浮かぶ

バリカンやハサミや櫛を、むやみやたらに動かしているわけではないのだ。フィニッシュに向かって、効率的に刈っていく。整えていく。

彫刻と一緒だ。彫り出す立体を正面、側面、後面、上面、斜面からサッサッサッっと。

見習い中は、最後のカタチが鮮明じゃないからもたつく。ためらう。何度も訊く。

1000円稼ぐウデは、深い。

Jupiter's dance