収集して編集するビデオアート
イギリス現代アートは意外に見る機会が少ないので東京ステーションギャラリーへ。
東京駅内部の遺構とおぼしきレンガ壁に囲まれた階段を登る。
「プライベート・ユートピア ここだけの場所」展。
アメリカ美術に比べてだけど、イギリスものは「だだっ広い」感じがしない。見る人が速く移動しても一瞬で認知できる美術と、立ち止まって凝視する美術。
開き直ってる作品も少ない。
エリザベス・プライスのトークもあった。
彼女は、ターナー賞を受賞したビデオアーティストだという。ターナーはイギリスの代表的画家。あるのかどうか不明だが、日本でなら、さしずめ岡倉天心賞ということかもしれない。
平面・立体・半立体ではなくて、ビデオアートの自作解説というのも期待ふくらむ。
開口一番「私の作品には、ストーリーがあります」。そうか、あんまり難解じゃなさそうだ。
「美術館の空間を、前提にしてます」。つまり、映画館の上映作品じゃない? やっぱり、アート?
「物で語ります」。人は、彫刻や資料写真で。情報は、誰かが書いたり言ったりした文字で。これが、ナレーターの役割をはたす。
「最後に音楽をかぶせます」。同じく、オリジナルの楽曲を起すことはしない。
つまり、素材はすべて「できあい」を収集し、編集して1本を作るということだろう。
最初に上映されたのが、THE WOOLWORTHS CHOIR OF 1979。
ウールワースの火災が、なぜ起きたのか? 火災の目撃者の証言映像資料を集めた作品。
「何にひっかかるのかは、自分でもわかりません」。
アイデアが湧いて、完成まで1年を超える作品ばかり。資料を集めに集めて、「これは、作品にならない」と挫折したものは数知れず。
よっぽど、自分で映像を監督したほうが思い通りのものができるのに、と思った。
それは、やりたくないんだな。