心待ちしてます、岡田さん

地下鉄「千駄木」駅から、団子坂を上がって着いた。

2階から東京湾が見渡せた森鴎外の家は、かつて観潮楼と呼ばれた。今、コンクリ3階建ての記念館になってる。

今年1月に、加賀乙彦さんと鴎外曾孫さんとの医療対談「鴎外と脚気」があった。聞きたかったなぁ、カッケ。

2月23日にあったのが、代表作「雁」の朗読。CDでは何回も聞いてる。今回は、文学座中村彰男山本郁子さんが読んだ。

全編じゃない。10・11・19・20の4章を、交互に読む。

東大で小使いをやっている末造は、学生相手に高利貸しを始めた。金ができれば、口うるさい女房に嫌気がさす。

一方、飴売りで貧乏暮らしの父親を持つ、お玉。

2人をとりもつおばさんがいて、末造は一軒家にお玉を囲う。

「僕」と、友人の岡田は、道すがらお玉に出会う。飼ってる小鳥が縁で、お玉は岡田に焦がれる。揺れるまなざしに、岡田が出した結論は・・・。

朗読は、聞く人の脳内情景だから、いくらでも拡散する。同じ物語でも、語る人でまるで違ってくる。

「雁」は、1時間演った。もう1つは、15分。「最後(さいしゅう)の午後」。

鴎外は、アンデルセングリム童話の翻訳でも有名でしょ? ところが、小説も訳していたんだ。

ハンガリー人のモルナール・フェレンツ。この人、ミュージカル「回転木馬」の原作者だった。

「最後の午後」は、別れ際の男女コメディ。不倫した妻の高らかな勝利宣言で終わる。

海外ものが100年前に訳された時、地の文は「候そうろう」体となる。この味が最高。

荘村清志