土のソムリエの思考術

陶芸をかじった経験を思い出す。

土の色の話。土は、土色だけじゃないのだ。赤、黄色、橙があって、黒と白。他にも青、紺、緑、黄緑。

陶芸用品のカタログを見た時、種類の多さに驚いた。でも、その時は、産地まで気がまわらなかった。キレイに並んだ土は、全国から取り寄せた土だったのだ。

地方地域で、いろいろな土がある。

左官 挟土(はさど)秀平の生きる力」六耀社刊。

左官職人は、どこにどんな土があるかを熟知しているのだろう。もちろん、土だけじゃない。気温、湿度、水、砂、藁。それをこねて壁を塗り、乾燥具合も頭に入ってる。

ラジオ深夜便」で、彼の声を聞いた。野太い、親方声。それに、どことなく美意識がある。どんな人だろうと読んだ。

業界では、「彼を知らなきゃモグリ」なんだろう。首相官邸とか、ペニンシュラ東京などの壁を手掛けた。

でも、本人は左官職を「絶滅危惧」だという。仕事量が圧倒的に無い。

土壁の建築は、世界遺産などでよく見る。中南米とか、中近東とか、アフリカ。遺産となるくらいだから、世界的には絶滅に向かっているのかもしれない。

日本でも土塀・土壁に出会うのは、観光古都か打ち捨てられた民家の裏手にある土蔵しかない。

彼なら、見かけるたびに日本人が捨てた美意識に忸怩たる思いを寄せるか。

・アバウトで、ランダムで、ノープロブレムなもの

大ざっぱでバラツキもある成り行きまかせの左官という仕事は、微妙にまとめあげる緻密な作業でもある。

えもいわれぬ表情は、目を養わないとわからない。

Jim Beard - "The Gentleman And Hizcaine"