ほんとかね? ほんとなんだ
上野動物園は、東園と西園がある。2つをつなぐのが日本初のモノレール。
西園は、かつて水上動物園と呼ばれていた。僕が「少年時代の庭」だった頃。上野駅から入るには南側の弁天門、北側には池之端門。池之端門の北に東大が広がる。
「そうか。先生は、ここが通勤路なんだ」。先生とは、木下直之さん。動物園の年間パスポートまで持ってる。かわゆい。
最初に読んだのは「世の中の途中から隠されていること」晶文社刊だった。うまいタイトル。目に入らなかった現在風景には、過去風景があったのだ。
「ハリボテの町」「博士の肖像」「わたしの城下町」。本人は文化資源学というけど、いつも、お茶目なノリがある。
「股間若衆」にいたっては、男の銅像の股間ウォッチングなんだから。
「戦争という見世物」ミネルバ書房刊。
明治27年12月9日、上野公園で「東京市祝捷(勝)大会」が開催された。その年、8月1日に両国が宣戦布告し、11月21日に旅順が陥落した日清戦争。
明治28年4月17日に下関条約調印前に、日本は上を下への大フィーバー。
地の利、勝手知ったる木下さんは、明治27年12月9日にタイムスリップし、祝捷大会を見学するのだ。正確には、8・9・10日の見物記。
場所も上野だけでなく、団子坂、浅草、馬喰町、日比谷公園、万世橋、靖国神社を散歩する。当時の資料を元に、自在に徘徊するのだ。
・軍用ビスケット、小児の軍帽、チャンチャン征伐流行歌。
・花月楼、伊勢勘、倉田屋、桜雲台、伊予紋などの出店料理屋は、たいへんな混雑。
・前をまくって放尿。立ション男を打たんとする刹那、かたわらの男が「今日は怒る日じゃない」と、またしても「帝国万歳」。
木下さん、学者を廃業して講釈師になってほしい。