高額だけはある舞台だった
日比谷にあるニッセイ劇場は、「階段の村野藤吾」設計。
「これが、それかぁ」。勾玉を組み合わせたような、動線のとりかた。
階段を見に来たわけじゃない。わけあって行けなくなったチケットが、巡り巡って我が手に。
紅いバラと白いマスクのチラシを見る。「『オペラ座の怪人』とは、ありがたい」。と思ったらまちがいで、「オペラ座の怪人」の完結編「ラブ・ネバー・ダイ」だった。
怪人ことファントムは、パリのオペラ座で失踪した。それから10年後、怪人はニューヨークのコニーアイランドで経営者になっていた。
コニーアイランドを日本風に言い換えると、江ノ島海岸に後楽園遊園地と花やしきをもってきたようなもの。規模は、その50倍くらいと想像してほしい。
上演時間の半分は、コニーアイランドでのショータイムの再現。美術・衣装・照明が、高額チケット代だけある。
パリで恋仲だったファントムとクリスティーヌが、このコニーアイランドで再会するのだった。
でも、クリスティーヌには夫と息子がいた。
さて、顛末は「ラブ・ネバー・ダイ」とファントムが歌って終わる。誰に? それを言うとストーリーがわかってしまう。
鹿賀丈史さんのファントムは、サラリとして、いい人すぎる。業を感じない。ダブルキャストの市村正親さんのほうが、情念があるんじゃないか。
豪華絢爛にして猥雑。激しい動きとしっとりスロー。久しぶりにミュージカルを堪能した。