完成度より、内なる心

頭上から黄色タケコプターが回っている。「おもしろいなぁ」。

普段電車のホームでは、整列乗車するために並んだりしない。今回は、ハッキリ見たいから彼女の後ろにつく。

藤子F不二雄のイベント帰りなのか、ビニール袋を下げてる。忙しくスマホをいじってた。

斜め後ろから覗く。指を動かすと、線が描ける。何回も、アイラインを描いては消す。

「アプリが入っているんです」。

「アニメーターになるの?」

「私なんかぁ。『どうして漫画家にならないんだろう?』という人がたくさんいますから」。

もっと高度なことをやるために、「ほんとはパソコンが欲しい」のだが、まだ買えてない。

数年前に白陰禅師の展覧会をやった時は、「かわいい」と大評判になって千客万来だった。

「日本の素朴絵」ピエブックス刊。

素朴 = ナイーブ、あどけない、子どものような、自然のまま、人為的でない、といろいろある。

もっともピッタリくる説明は、「ウマイか、ヘタかではない」だろう。

「知識人の素朴」の章に出てきた白陰の禅画「すたすた坊主」。禅寺の住職をやっていたから、知識人なのか。

乞われるままに書画を描き与えたのは、数千点。自由人だったのだろう。おおらかな、遊民に思える。

人柄を慕って集まった弟子たち。彼らも師と同じように、ユーモラスな画を描いた。

その一番若い子孫が、目の前にいるタケコプター女子高生なのだ。画は、食べる目的じゃなくてもいい。

Al di Meola - Race with Devil on Spanish Highway