豆腐小僧は、先生が発見した

「書楼弔堂 破嶢(しょろうとむらいどう はぎょう)」集英社刊。

京極夏彦さんは、お化け好き。いきおい、画文古書に親しんで幾星霜。この本は、彼の理想郷を描いたものだろう。

書楼とは、本屋のこと。屋号は、弔堂という。もうすでに、ここから薄暗い。

時代が明治になり、元士族の主人公は煙草の商売に付き合うが、身がはいらない。本宅には家族がいるのに、別に家を借りて散歩三昧の日々。

そして、買うでもなく寄るのが書楼弔堂なのだ。

弔堂店主が語る人々が、これまた妖気ただよう。月岡芳年泉鏡花、井上圓了。

弔堂で丁稚をやっているのは、「しほる」という名の小僧。京極さんには、ヒットした「豆腐小僧」シリーズがある。こまっしゃくれた姿が重なって、うれしい。

大笠をかぶり、お盆に豆腐を乗せてスタスタ歩く坊ちゃん。

「日本の皆さん、御国にはキュートなお化けがたくさんいます」と、今まで数々の本を出してきたニューヨーカーのアダム・カバット先生。

武蔵大学で、お化けが出てくる草双紙を教えている。やっと、学外での講義に出席できた。場所は国際文化会館

数々の草双紙に出てきた豆腐小僧

「小雨が降る夕方から夜、ちょうど今日のような時です」豆腐小僧は吉原に現れ、人の後を歩く。

遊女・高尾大夫の着物の柄は紅葉だった。彼女が豆腐に変身する物語もある。

「不景気になった。お化けも失業したけど、豆腐小僧豆腐屋に就職し、天秤棒を担いで売り歩きました」。

豆腐には、どれも紅葉マークが入ってる。「こうよう」→「買うよう」の意。

カバット先生の功績は、この豆腐小僧を「発見」したこと。日本の研究者は、見逃していたのだ。

Robin Guthrie & Harold Budd - Bordeaux