霧がむせぶぜ、このヤマは
IMA CONCEPT STOREイマコンセプトストアが3月にオープンした。
写真ギャラリーと、写真集売り場と、カフェがある。
恵比寿にある東京都写真美術館と比較すれば、写真遊園地の感あり。
美術館には展示に「監視」という、れっきとした職制がある。展示を見るには、入場料がいる。イベントは基本無料。
イマコンは、商売。訪問者は、全員がお客様なのだ。だけど、充実イベントは有料。
他にも、7名ほどの現代写真家のものを閲覧。グラフィックデザインと写真が融合した作品が多い。
2回3回と、重ねて遊びに来たい。
「張り込み日記」roshin books刊。
ロシンブックスは写真専門出版社といわずに、写真専門出版レーベルと名乗る。意気込みや、軒昂。
この写真集のできるまでが、おもしろい。
2006年、神田古本屋街を訪れたイギリス人。120枚のプリントの束を目にした。買い込み、なんとか写真集にしたいと調べたら、日本にネガフィルムが現存することがわかった。
フランスの出版社が出したのが「A Criminal Investigation」。この情報を得て、改めて日本で写真集にまとめた。
写真家は、渡部雄吉さん。
時に、昭和33年1月13日。茨城県・水戸市で男の親指・鼻・オチンチンが発見された。猟奇にざわめく。
被害者は、墨田区の佐藤忠と判明。捜査は、東京に移った。
警視庁捜査一課の向田刑事と、茨城県警の緑川刑事を、同行したカメラは追う。
足で稼ぐ聞き込みに、骨がきしむ音が聴こえてくるような写真だ。
都電が走り、木造住宅が並び、電話は黒色、食糧店ではヌカが量り売り、交番にはダルマストーブ。紫煙・ハンチング・大八車。
松本清張が書く景色が、目の前にあった。
日本人がドアノーの写真にフランス人を感じたごとく、ヨーロッパ人は雄吉さんの写真にジャポネを見た。