柵がない場所の動物たち
行動展示で人気の旭山動物園。
カバ舎を改修した。今までは、1m程度のプールだった。カバは泳げないから、これより深くすると溺れちゃうと。
「ほんとかな? カバが生棲する自然には、1mより深い川や沼もあるだろう」と考えた坂東園長。深いプールを作ったら、カバは必死に泳いで水面にもどる。
カバも「スリルがあっておもしれ〜」と、積極的に遊ぶ日も近いか。
その坂東園長が、狩猟銃のライセンスを取得して、鹿狩りを始めた。
誰もが驚いた。
「皆んな、自己主張をする。野生動物を守れという人も、農業被害を訴える人も」。獣医から始まったキャリアは、行動展示で動物と人間の接点に結実した。
今度は、動物園の外に出る。
鉄道をまたぐ鹿の群れ。遊園地の鉄道なら、鹿大歓迎。本物の鉄道なら保安上、由々しき問題。自衛隊まで殺処分に出動するほどの大群なんだ。
どうする? どっちの立場になる?
TVカメラの前では、引き金に指をかけない園長。森の生物多様性を考えると、鹿は殺さなければいけない。
他人ごとにできないが、射撃の公開にためらいもある。
「どうぶつのくに」5月号で、神奈川県・金沢動物園の原久美子園長の記事を読む。
職員には、「畜産職」「動物職」があるんだ。飼育繁殖だけでなく、ミュージアムとしての展示普及活動。
金沢動物園では、檻や柵を使わないで、放し飼いにする無柵放養式を整備中。
自然は、もともと無柵だ。
子ヤギと遊んで、母ヤギに体当たりされたことがある。つんのめって投げ出され、泥だらけになった経験がある。
一方の立場から他方を排撃するなんてことは、とてもできない。