「白雪姫」が「氷山」になる
とにかく、ドイツ語で「白雪姫」のことをSchneeweißchenと言うのである。どう発音するかは、昨日聞いたのに忘れた。
そもそも「白雪姫」は、ドイツのヘッセン州の民話なのである。ディズニーの創作じゃない。Schneeweißchenとネーミングされたバラがある。
「花屋さんに言ったら、『いえ、アイスバーグです』って訂正されちゃった」と、ちょっと悔しそうな顔で語るマダム。「『氷山』なんて、花らしくないでしょ?」と、聴衆に同意を求める。
都立園芸高校の園芸フォーラムで開催された講演会。
去年は、蓬田(よもぎだ)勝之さんだった。資生堂で香りの研究をやっていた人。今年登壇したバラ専門家は、高木絢子(あやこ)さん。
高木さんは、英国王立バラ協会員。
育種家が育てた新種に、「マダム タカギと名付けたいのですが」と声を掛けられるほどの専門家なんだ。
「花を見て、私ってこんなに地味?」と、女のプライドもあったが育種の苦労を慮って同意した。
審美・審香・審形に愛情を注ぐ。1本1本の説明に「この子は〜」というくらい。
スタートは少女時代。
「父親が庭にあった花を切って、家に持ち込んだんです」。もちろん当時、名前は知らない。赤黒い、ビロードのような、妖しいバラ。香りも魅惑的。
「これが、そのクリムスン グローリーです」と、映写する。
たぶん、ファム・ファタルとか悪女のアイコンになるバラじゃないか? カルメンが、口にくわえて男を誘惑するバラ。
マダムは、いかにも永年バラ一筋という人。
・どんな荒野の幾星霜を バラは歩いてきたことか
魅せられて、イギリスの詩を披露する。「バラは私だ」と受け取った。とにかく、背景に物語がたくさんある花なのだ。