熱心に時代精神を伝える
明治神宮から、案内ハガキが届く。
皆さんは、夏目漱石の写真を見たことあるでしょ。小首を傾げた頭に、右手添えてる写真。じゃ、左手はどうなってる?
真っすぐ降ろして、肘に黒い腕章をしてる。これは、明治天皇崩御の喪章なんだ。前に明治神宮を訪ねた時、参道に掲出されたパネルで読んだ。
あれから2年。今回のハガキは昭憲皇太后崩御に合わせた講演会の知らせ。
夫に先立たれ、2年後に夫の元に旅立った妻。
小平美香さんが、明治神宮国際神道文化研究所が出してる「神園」に連載した原稿に加筆した本。
皇后の時代、女子教育・殖産興業・福祉活動に熱心な人だった。3万首を超える和歌も詠んだ。
明治神宮しおり「まごころ」に載ってる五月の御歌。
・文机(ふづくえ)に すえたる玉も ともすれば
ちりのかかりて くもりがちなる
国の母になる覚悟が偲ばれる歌。
「『明治天皇紀』と『昭憲皇太后実録』は、ペアで紐解いて」と呼び掛ける岩壁義光さん。この人、元宮内庁書陵部編修課長。
左大臣一条忠香の娘に産まれ、勝子(まさこ)と命名される。明治元年、美子(はるこ)と改名。つまり、美子皇后。
「昭憲皇后という人がいますが、間違いです」とは、米田雄介さん。彼も元宮内庁書陵部編修課長。
彼らが解題・頭注・索引を付けた、3冊の「昭憲皇太后実録」が吉川弘文館から公刊なった。
全事蹟を網羅したので、日付からテーマから行啓から生活から側近から、闊達に引けるデータベースになっている。
・明治4年11月9日
風邪気味だったが、加藤弘之から西洋事情の進講を受けた日は、津田梅子たち女子留学生5人に賜謁し、「しっかり勉強してくるように」と声を掛けた日でもあった。