背伸びと無理の悲喜劇
「市場と権力」講談社刊。
元日本経済新聞社の記者、現在リーランスのジャーナリスト佐々木実さんの本。
追っている相手は、竹中平蔵さん。
小泉政権で「痛みを伴う構造改革」を主導した。とはいえ、鳩山由紀夫にも「コンサルしますよ」と、すり寄る全方位男。阿部政権下では、どう動いてんだろう?
「これがこけたら、その他には?」という目配りは脇役型の典型。
誰もが考えながら暮らしているが、天下国家の経営となると話は別。
「痛み」どころか、会計士の自殺の遠因を政策したことに、平蔵さんは答えたのだろうか?
和歌山の下駄屋の息子が星雲の志で上京し、アメリカに学び、政官学界を遊泳する。
一番勉強した時期に身につけた思想は、その後も人生を支配し補強する。見方・生き方はいつも需要ではなく、供給側。
同じサプライサイドに立って立身出世に励んだ男たちの群像も合わせて読む。
「カネが邪魔でしょうがない」新潮選書刊。
紀田順一郎さんが明治・大正時代の成金を案内する。
ちょうど100年前、第1次大戦が欧州で勃発し、チャンス到来とばかりに獅子奮迅。でも終戦になれば、たちまち没落。
「あれって、なんだったの?」というくらい、「その次」を考えてない遊蕩と愚行の数々。主役型の典型。
それでは、男たちへの挽歌。
・秀吉が豪壮な聚楽第を建てた。門前に落首が貼り出される。「おごれる者は、久しからず」
・すると、ただちに返書が貼り出された。「おごらずとても、久しからず」