「大人買い」は青春の尾っぽ
「ガラスの街」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」これが、ポール・オースターのニューヨーク三部作。「孤独の発明」もある。
いつか読みたい、と「大人買い」してた本。かえって読まない。
半月ほど前に、「ムーン・パレス」新潮文庫刊の話題が出て、読もうと思ったら、これは買ってなかった。
どのへんが気になったかといえば、
・人生を棒にふる
・ダメ男
・突拍子もない行動
をキーワードに、アメリカ文学を紹介する講演で「ムーン・パレス」が出てきたのだ。
久しぶりに青春小説を読んだ。青春は、3つのキーワードがすべてあてはまるよな。
・君は、夢想家だからなぁ
・心が月に行って、これからもずっと同じ
・野心がないし、金にも興味がない
これは、大学を卒業した「僕」を雇った老人の言葉だった。
と言っている老人がまともかといえば、これまた3つのキーワードがあてはまる人。オースターは、自分を老若に書き分ける。
このあたり、今新聞連載中の漱石「こころ」と似てる。
も一つ似てると思ったのは、円朝作の落語「牡丹灯籠」。家系という過去に突然出会う物語でもある。
翻訳した柴田元幸さんの解説では、「ムーン・パレス」は1989年に発表したもの。
話は1969年から72年のことだから、約20年の歳月を経なければ書けなかったことになる。郷愁はあるが、自伝ではない。
・間違った時間にしかるべき場所にいて、しかるべき時間に間違った場所にいる
滑稽で、切実な小説。愉快だが、暗い深淵が満月のように大きく口を開けている。