さもありなん、で読ませる

何度も「リタイアする」と言っては返り咲く、諜報小説家フレデリック・フォーサイス

最新作「キル・リスト」角川書店刊。

最初のリタイア宣言をした時、記者から「これから何を?」と問われ、「田舎に引っ込んで、ゆっくりしたい」と答えた。

イギリス人成功者には、カントリー・ジェントルマン願望があるんだな、と感じた。そして、復帰して新刊を出す度に、「サスペンス映画のままじゃん」と、ちょっと可笑しくなる。

よくあるでしょ。

困難なミッションのためにかき集められた、○人のスペシャリスト。盗聴が得意なやつ、爆弾が、銃器が、クルマ運転が、コンピュータが、偽造が得意なやつ。

その中に必ず1人、引退した奴が誘われるシーン。

最新作は、デビュー作「ジャッカルの日」から続く冴え渡る文で、飽きない。どんどんページが進む。

・毎週火曜日の朝、大統領執務室オーバル・オフィスで<キル・リスト>に新たな標的をつけ加えるべきかどうかが検討される。

・デスクに一枚の紙を置いた。それには単純に「<説教師>。身元を暴き、捜し出し、抹殺せよ」と書かれていた。

下には、アメリカ合衆国大統領の著名がある。

秘密情報部も保安局も、いかなる裁判所の許可もない、完全に違法な作戦に、全軍最高司令官コマンダー・イン・チーフのお墨付きが出た。

フォーサイスは、ロイター通信特派員をやっていたから、ことの5W1Hを綿密に描写する。虚実が、ニュース原稿のように展開するので、気持ちがはやる。

前に、オサマ・ビン・ラディン殺害のドキュメンタリーを読んだ。20〜30ページのもの。

それは、本書第三部の「決着」の箇所だ。準備万端整って、いよいよ特殊部隊が結集するところから結末まで。

でも、テロリストをミサイルで殺害したような現実のニュースは、第一部「任務」、第二部「報復」にあたるプロセスが潜行してんだろうな。

執筆はタイプライターでやるフォーサイス

・タイプライターはハッキングされないからね。

舞台になったソマリア、知りたくなってきた。

EMMANUEL PAHUD