ガルシア入門は、講演から
新しく小説家を知って、まず読むのはどっち?
小説自体のほうか、それとも本人の評伝・批評の類のほうか。僕は、後者のほうが多い。
人や時代や土地を知りたいからなんだ、と思う。小説に限らず、作くられたものはすべて時間空間の産物だ。
「ぼくはスピーチをするために来たのではありません」新潮社刊。
ガルシア・マルケスはコロンビア人。原題のYo no vengo a decir un discurso。Yoは、スペイン語でIのことなんだろう。
1944年から2007年までの講演録。これですべてだとしたら、明らかに少ない。人前でしゃべるのが嫌い、苦手。
では、小説をたくさん発表してるかといえば、これまた寡作。どうやって生活していたのだろう?
・作家の仕事はおそらく、やればやるほど難しくなる唯一の仕事だということです。
・何かないかと待ち受けて、アイデアが浮かぶと椅子に腰をおろします。
アイデアをああでもない、こうでもないと転がしている時が至福で、書き始めた時はもう面白くない。「百年の孤独」は、熟成に19年かかった。
ノーベル文学賞の受賞スピーチ「ラテンアメリカの孤独」は、「すいません」と誤りながら読んでた。
マゼラン以降現代まで、
・桁外れの現実から生まれて来た人間は、想像力に頼る必要はほとんどありません。
・自分の文化をうっとり眺めている理性と才能に恵まれた方々(いわゆる文明諸国)が、われわれを解釈するのに有効な方法を見出せないのも無理はありません。
友人70歳誕生日の「わが友ムティス」は愉快。
通常のスピーチより、だいぶ長い。よっぽどご機嫌だったのだろう。
話はムティスの母親まで及ぶ。ある夜、映画を見たいから1歳2ヶ月の我が息子を預かって欲しいと頼む。
・前にも頼まれたんだけど、その子、どうしても泣き止まないので毒入りキイチゴのお菓子を食べさせて、おとなくさせたのよ。それでもいいの?
「百年の孤独」読みたくなってきた。