天然スッポンは売れない
「どろにやいと」で候補になるも、今回も落選した戌井(いぬい)昭人さん。イベントで会ってから、毎回願っているが、毎回落選する。
顔が、何回も洗い込まれた「洗濯物」のようで好きになった。
シリアスに一生懸命やってるが、常々空回りする人生。本人の生き方が、書いている主人公とダブる。
「すっぽん心中」新潮社刊。
ひどいムチ打ち症になった主人公の男。首が横向きだから、動作がままならない。顔は食べ物を向いているのに、体は90度横を向く。
「なにやってんの?」という、とりとめのなさが可笑しい。
男、福岡出身19歳の女と出会う。テレビの料理番組でスッポン料理を見る。ここで女は、霞ヶ浦でスッポンを捕獲するとことを思い立つ。
穫るには穫った。
それをスッポン料理屋に持ち込んで「安くていいから買ってくれ」と談判する。養殖物しか扱ってないので、断られる。
女は「悔しか」と、目を潤ませる。
これ、去年の芥川賞落選作。でも今年、川端康成文学賞は受賞したから報われた。
彼は、深沢七郎さんが好きと言ってた。浅草でだんご屋のバイトをやっていたのは、深沢さんの影響かもしれない。