天然スッポンは売れない

第151回芥川賞直木賞が発表された。

「どろにやいと」で候補になるも、今回も落選した戌井(いぬい)昭人さん。イベントで会ってから、毎回願っているが、毎回落選する。

顔が、何回も洗い込まれた「洗濯物」のようで好きになった。

シリアスに一生懸命やってるが、常々空回りする人生。本人の生き方が、書いている主人公とダブる。

すっぽん心中」新潮社刊。

ひどいムチ打ち症になった主人公の男。首が横向きだから、動作がままならない。顔は食べ物を向いているのに、体は90度横を向く。

「なにやってんの?」という、とりとめのなさが可笑しい。

男、福岡出身19歳の女と出会う。テレビの料理番組でスッポン料理を見る。ここで女は、霞ヶ浦でスッポンを捕獲するとことを思い立つ。

穫るには穫った。

それをスッポン料理屋に持ち込んで「安くていいから買ってくれ」と談判する。養殖物しか扱ってないので、断られる。

女は「悔しか」と、目を潤ませる。

これ、去年の芥川賞落選作。でも今年、川端康成文学賞は受賞したから報われた。

彼は、深沢七郎さんが好きと言ってた。浅草でだんご屋のバイトをやっていたのは、深沢さんの影響かもしれない。

フォーレ:「夢のあとに」