兄貴世代のスタイル
あれは、6月17日だった。青山を歩いてワールドのビル前に告知が出ていた。
CELEBRATING Thirtieth ANNIVERSARY 1984−2014
今年は、ワールドが菊池武夫さんとコラボしたブランドTAKEO KIKUCHIが30周年を迎えた。懐かしくて、おもわずドアを押す。
「本日は、内見会です」。秋冬向けにバイヤーを招いて商談をする日。ハンガーに吊るされた商品に近づくことはできない。
それでも立ち尽くす。「ご本人は?」「えぇ、来てますよ」。
案内してくれた。会いました、憧れの男。今年で75歳。初老の魅力に、とっさに言葉が出ない。ため息まじりに問いかけた、マヌケな一言。
「相変わらず、もてるでしょう」
「いゃあ、もう、それほどでも」。
10年間くらいは、TAKEO KIKUCHIを買い続けただろうか。スーツ、靴、ベルト、その他の小物。
「菊池武夫の本」マガジンハウス刊。
出生から将来展望まで、仕事からプライベートまで。自筆原稿もあれば、座談会の言葉もある。
デザイナーズブランドの一人だから、回顧すれば70年代からの著名デザイナーや写真家の名前が続々出てくる。
現在の常識を30年前からやっていた。
コレクションでは、世界を歩いて「素人モデル」を集めて発表した。
セレクトショップも仕掛けた。洋服というモノに限定せず、スタイルをアピールする手法。店内に床屋を開店する、ビリーヤード場も作る。
短気なんだけど、短気の出し方がわからない。怒らない、叱らない。だから紛糾すると、フケる。しばらくすると、もどって来る。
性格がにじみ出てる、抑制的なデザインの服。「もってる」ものを全開させない奥ゆかしさ。
多趣味な彼のナンバーから、ソニー・クラークを聴く。