限界をわからせる動物園
動かない鳥ハシビロコウが、夜陰にスッと立つ写真がチラシに使われていた。
上野動物園で、夏恒例の夜間開園の知らせ。20年ほど前に行った。
「動物園にできること」文春文庫刊を読んだので、横浜で夜
に開園してる動物園を探す。土日だけ、ズーラシアが夜8時までやってた。
入ったのは7時。園内地図をもらう。薄暮のかけらも無く、真っ暗で灯りの下でなければ見られない。こりゃ、出直さないと。
園は8つに区分けされ、「ようこそ、世界一周の動物旅行へ」行ける。「アジアの熱帯林」は見た。次「亜寒帯の森」途中で閉園時間となった。
「動物園に〜」著者川端裕人さんの出発点は、「動物園は正当化できるか?」という問題意識。アメリカに留学して、回った動物園は35カ所、取材した人120人。
かわいい、すごい、不思議だ、といって見過ごせない、着眼の広さに圧倒された本だった。
たとえば、種のこと。動物多様性の維持という。
哺乳類は330種いる。1種に300個体が必要だ。鳥類467、爬虫類96、両生類32。計54万個体を確保しなければいけない。できるはずが無い。
それは、人間が見て見栄えのする動物優先だ。
種の保存のことも問題山積。
繁殖すれども、繁殖し過ぎたらどうするの? 他園に移動させるには、高額な専門運送会社に頼まないと。ストレスを和らげる動物福祉を飼育員は始めた。
ゾウは、従来から手カギとナタで飼育する。
手がつけられない暴れんぼうが多いゾウ。それを、指示に従ったら食物を与えるような条件付けのテクニックが使われるようになった。
キーワードは、エンリッチメント。精神的身体的な健康を考える。動物園専門のランドスケープデザイナーも出現。
でもさ、
囚われの動物たち。舞台を作って、舞台であることをわざわざ隠す自然に近い展示とは。
無邪気になれなかった。