フィクションのような日常

とても詩的な写真を見た。ルイス・ガブの写真展。

サンチャゴ大聖堂でのモノクロ写真。静けさと力強さが両方ある写真。

イタリア人作家イタロ・カルヴィーノの本「見えない都市」河出文庫刊を読んでいたので、世界を旅したらこんな教会で骨休めしたいなと。

本で語る人は、マルコ・ポーロ。聞くのは、フビライ汗。

宮殿に伺候した冒険家が、世界で見てきた諸都市を語る。全地球の支配者に、まだ征服してない町々の様子。

そこは、とても精緻な銀細工越しにみるような景色があった。

1話1話は、どれも短い。

不思議な言葉、瑪瑙(めのう)、砂時計、らくだ、なめし皮、衣装戸棚、遊女(あそびめ)、噴水。どれも、絵にしたい。

「見えない都市」を読んだイタロ・カルヴィーノの同国人映画作家がいた。ジャンフランコ・ロージ監督。

本に触発されて「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」を作った。

追いかけて、僕も見た。

ローマ人の日常風景なのに、とても旅の途中のように見える。環状線のクルマの群れが、たびたび映し出されるからだけじゃない。

4人の人生が旅なのだ。現実を、あたかもレース越しに見るようなフィクション性。惨いのに、詩がある。続く毎日を、こんなに美しく描けるのか。

出てきた1人に、植物学者がいた。会いたい。

いずれ本を絵にしようと思っても、これほど変換できる画家を知らない。