玉さま御用達の鏡花初読み
10月の市川猿之助奮闘公演「獨道中五十三驛(ひとりたび ごじゅうさんつぎ)」。
鶴屋南北作を、18役の早変わりで演る。南北なら奇怪なキャラが続々と登場するから、是非見たい。一番安い切符が3000円だ。
申し込んだ。
とんでも御座いませんでした。すべて売り切れ。発表時点で、即日完売。「おととい、おいで」。
腹いせに読んだのが、泉鏡花の「天守物語」。数ヶ月前、歌舞伎座は玉三郎&海老蔵で演ってた。
玉さまの当たり役。昭和52年に初演して、相手役には何人が立ったのか。
河出書房新社刊「鏡花幻想譚 5」の中の一篇。総ルビ付きなので、古語でも読める。地図と解説と注まで付きの親切編集。
天守夫人・富姫は、姫路・白鷺城の天守にすむ妖怪。会津・猪苗代城に住む亀姫という妖怪は、富姫の妹。
この妹、500里を飛び、お土産を持参して姉に会いに来た。「お姉様、おなつかしい」と差し出したのが、猪苗代城主・武田衛門之介の生首。
姉いわく「まぁ、あなた。私のために、そんなことを」と、口ほどにも驚ろいていない。
そこに、若き鷹匠の姫川図書之介(ひめかわ ずしょのすけ)登場。
男はこりごりの富姫と、殿様の不興を受けた武士の恋物語。
大正6年に鏡花が書いた戯曲。初演は、昭和26年に新橋演舞場で。
「獨道中五十三驛」は、10月に新橋演舞場で演るのだった。残念。