柿には鶏が絵になる

京王線柿生駅」と、田園都市線青葉台駅」の中間にある寺家(じけ)町のふるさと村。

宅地と大学にかこまれている。

ふるさと景観が残る敷地に、多摩美卒業生たちが作品を発表している「寺家回廊8th」。8年前から、活動しているということか。

自然に拮抗できるアートを見たことが無い。

かすかに存在感を出せるのは、建築か。でも、それすら大気と大地に取り込まれて、はかない。

東京ドームは水道橋にあるから、大きな顔ができる。田舎にあったら、全然目立たない。

村は、柿の木が多い。8個一山200円で直販している親父に訊く。

「ネットを被せないと、カラスが来るでしょう?」

「畑で仕事をしていれば、来ないよ」。カラスも人を見ているのだ。それに、完熟直前を好むので、今は様子見らしい。

「中世的世界とは何だろうか」朝日文庫刊。

網野義彦さんの本に、やっとたどり着いた。今まで読んだ本に中に、たびたび彼の名前が出て来た。

遊女、海民、非人、婆娑羅白拍子、駆け込み寺、無縁、流浪、奴婢、賎視。

住所不定で、何やってるのかわからず、あいまいで、歴史に書かれなかった人々の生を追いかける。

NHK大河ドラマと真逆の歴史家。書き留められないで消えていく人々。惹かれる。

柿の実は重いんだ。20個も実をつけると枝がたわむ。地上すれすれまで垂れ下がっていた。

「ここいらは、前は桑畑だったんだよ」。お蚕を飼う桑。中世も桑を植えていたのだろうか。

★旅する目玉 水戸部功さんの装丁

♪旅する鼓膜 Zemlinsky: Die Seejungfrau