太郎冠者、苦しゅうない
物干竿5本つなげても届かないが、10本あればフェンスに届く國學院大学のたまプラーザキャンパス。
「第17回狂言の会」があった。
能は事前勉強が必要だ。狂言なら、せりふが聞きとれるから行く気になった。
階段教室の上から眺めると、舞台はだだっ広い寿司屋のカウンターのようだ。白木の清潔感にハッとする。
大蔵流で、「船渡聟(ふなわたしむこ)」「寝音曲(ねおんぎょく)」「蜘盗人(くもぬすびと)」の3つ。
これから結婚するので、彼女の父親に「娘をください」とあいさつに向かう男が「船渡聟」。
父親のごきげんを損ねないよう、土産用に大きな酒樽を持って船に乗り込む。飲み助の船頭は、酒樽が気になってしょうがない。
「ちょっとだけ、飲ませてくれ」「それは無理」。
断り続けると、船頭は実力行使に出て船を揺らす。
「しょうがない」と酒を注ぐうちに、いつの間に自分も飲めや歌えで、対岸に着いた時は2人ともすっかりできあがる。
さて、父親の前に進み出た男。すっからかんになった酒樽に気付いて、面目失い逃げる。
ほか「寝音曲」も「蜘盗人」も、酒を飲む話。飲めば、歌いたくなる。歌えば、踊りたくなるなる。ご陽気3題。
出てくる謡曲を、文字どおり鑑賞できるに越したことはない。舞いも同じ。
わからなくても、駘蕩とした舞台でよかった。
大蔵流の山本東次郎(とうじろう)さんは、國學院卒の人間国宝だった。番外で、舞台解説と小舞のサービスをする。
劇場で見れば、5000円はするだろう。
★旅する目玉 白石雪妃(せつひ)さんの書道