おじいさんを追いかけて
おじいさん好きである。特に、マイウェイを歩くおじいさん好き。
前に國學院大学で狂言を見た。演目が始まる前に、着流しのおじいさんが出て来て、解説を始めた。
説明がさっぱりわからない。わからないのが気持ちよくて、「ひっこんでくれ」とならずに、ずっと聞いていたくなる不思議。
場の空気を読まないのではない。おのれ以外は存在しない、歩く古文書。
名前すらわからない場合は、とにかく「先生」と話しかければ無難だ。「僕はフランス好きで」と聞き、ますます好きになる。
徳江元正さん、83歳の国文学者。中世芸能が専門で「室町藝能史論攷(ろんこう)」の著者。
室町ビギナーとしては手が出る。即、挫折。謡曲の研究書だった。
日本の伝統文化といわれるものは、室町時代に始まる。その辺、シロウトに紐解いてもらいたかった。
もっと年季の入ったおじいさんの作品展に行く。山口勝弘さん、86歳。
バウハウス、構成主義、ダダイズムを日本に紹介した人。岡本太郎、瀧口修造、武満徹と同時代人。ウォーホル、ナムジュンパイク、河口洋一郎もいる。
「水の変容」展。
ドローイングは、一筆一筆のタッチが軌跡として独立しているから、見ながら手首が動く。
映像もあった。寄せては引く波では、水平線上に後処理された電波状の光が走る。
「三陸レクイエム」は、水を見続けて来た自負が裏切られる津波エネルギーを、荒々しい筆で描く。我が魂は、洪水になった。
会場の横浜市民ギャラリーあざみ野。階段が主張していて、なんとなく横浜美術館に似てた。
ここ、展覧会もやるが美術ワークショップも盛んなビルだった。
★旅する目玉 彦坂木版工房さんの版画
♪旅する鼓膜 Platina Jazz - Sobakasu