人になった木彫り人形の末
岩手県生まれの宮澤賢治。作品を岩手弁で朗読した長岡輝子さんのCDを聞くと、他の人の朗読は嘘っぽくて聞けない。
米米クラブの石井竜也さんは、音だけじゃなくて八方にクリエイティブな才能を開花させている。
デザイナーの菊池武夫さんは、老いの魅力でますますファンを増やしてる。
久里洋二さんは、日本アニメ界の草分けだ。
全部、文化学院の卒業生。
矢野誠一、前田美波里、宮脇愛子、稲葉賀恵、谷桃子と各界に広がる卒業生。
自由な校風といえば、この文化学院がまず浮かぶ。
西村伊作が文化学院を創立したのは後年で、まずは幼い娘アヤとよく遊んでいた。
友だちの佐藤春夫から借りた英訳本「ピノチオ」を、9歳の娘に読み聞かせた。聞いたアヤは、それを絵にする。1920年に絵をまとめて本にする。
これが本邦初の「ピノチオ」単行本だとさ。
原画展があった。写真は「鳩にのって飛ぶピノチオ」。色鉛筆を握って夢中になる娘と、それを見つめる父親。
入手しました、「老ピノッキオ、ヴェネツィアに帰る」作品社刊。
・19××年、二つの大陸と二つの世紀を乗り越え、悪天候に追い立てられ、さらなる不幸に怯えながら、病と時差ぼけと大いなる不安と多大な荷物を抱えたアメリカの大学の老名誉教授が、世界一の魔都と信じられている都市の駅に降り立つ。
老名誉教授ピノッキオが、ヴェネツィアのサンタ・ルチア駅に降り立つ。
2度もノーベル賞を受賞したが、自伝の最終章を書きあげるためにふるさとに戻って来たのである。
木彫り人形から人間になったピノッキオ教授が、現実と虚構を往来するパロディ。
あざとい現実に立ち向かう文化学院の老卒業生たちとだぶる。
★旅する目玉 きたむらさとしさんの絵
♪旅する鼓膜 J.S. Bach - Easter Oratorio