偶然から始まったアート
これ、ロックバランシングアート。
すでにネットサーフィンで止まった人もいるだろう。僕の場合は本屋サーフィンでひっかかった。
海や河原や山で、実際にロックバランシングをやっている人がいたら、驚きは何倍か。
黙々と石を積み上げる姿に、声を掛けるのもはばかられる。でも、訊かずにはいられない。
「何してるんですか?」。
しばらくして「なぜ石がバランスしてるの?」。そして「どうやってバランスさせるの?」。第2段階になると「何年やってるんですか?」「同じようなことをやってる人もいる?」。
写真に撮れば、永遠に石はバランスを保ってる。実際は、そよとした風、ちょっとした拍子に崩れる。一瞬の姿に、著者のピーター・ジュールは「やっと」アートという言葉に行き着く。
「あなたもできる! 奇跡のロックバランシング」今日の話題社刊。
今までロックバランシングをやってきて、よく訊かれる質問にまとめて答えたのが、この本。
石に石を乗せて安定させるのは、物理の法則。石の形や色はデザインの領域。撮影のテクニックなら、作業時間や場所や背景を考える。石そのものの理解なら、地質学だ。
分析的に説明はできる。
でも行為は、遊びであり、離れ業であり、修業であり、瞑想であり、崇拝にも似ている。
よく、自然にしつらえた金属やガラスモニュメントがある。どれだけ巨大でも矮小だ。
ロックバランシングは、サイズは握りこぶし程度でも自然に拮抗してる。
家人に愛想を尽かされ、罵倒されるのは承知の助。ながらも諦めきれずに今日も石を並べて思索にふける。
つげ義春は多摩川、ピーター・ジュールの場合はスペリオール湖で心の奥底を見つめる。
★旅する目玉 石花ちとくさんのロックバランシング
♪旅する鼓膜 交響曲第3番「スコットランド」 メンデルスゾーン