年末はブルースが似あう

「幕末の毒舌家」中央公論新社刊。

天保9年生まれ、明治30年没の大谷木醇堂(おおやぎ じゅんどう)は、書きなぐった。書き飛ばした。書きちぎった。

書いても書いても、とめどなく「あっ、そのことについちゃ」が出てくる。

「公私雑録」300巻に腰を抜かしてはいけない。

「醇堂叢書」50巻、「醇堂漫抄」30巻、「醇堂手抄」30巻、「醇堂記抄」30巻、「醇堂雑綴」30巻、「醇堂雑録」25巻、「醇堂一家言」25巻、「醇堂一見識」25巻、「醇堂間話」25巻、「醇堂雑著」15巻

・・・・といった具合であり、と著者の野口武彦さんもうんざりした顔が浮かぶ。

国会図書館には「醇堂叢稿」45巻が所蔵されていて、入れ子型に「醇堂放言」「醇堂漫言」「醇堂淑言」「醇堂小言」「醇堂粋言」「醇堂五話」「醇堂茗話」「醇堂閑話」「醇堂酔話」「醇堂雑話」。

ルンルンの記録魔、書写魔。← 1ヶ月に1冊新刊を出す「あの人」も真っ青。

落魄の遺臣といえば聞こえがよい。

イコール、幕末の貧乏旗本。必然的に文章のトーン&マナーは以下のごとし。

世を拗ねる、白眼視する、歪む、皮肉を飛ばす、嫉妬、冷罵する、嘲笑する、的外れ、ひがむ、線を引かない、憎まれ口、怨念、まず疑う、強情、槍玉にあげる、説教口調。

とはいえ、麻布に産まれて「狸穴の奇児」と呼ばれていたから、素地はあった。

反感を買い、うるさがれ、くどくて、珍妙で、白けさせ、疑われ、無神経と言われようが、どこ吹く風。

なべて、醇堂は僕である。僕はブルース好きでもある。

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★旅する目玉 難波田史男さんの絵

♪旅する鼓膜 BB King - How Blue Can You Get