集まってドキドキ夜明かし


広重作「王子装束ゑの木 大晦日の狐火」浮世絵。えのきと読む。榎のこと。

榎のもとに狐が集まって装束を整え、王子稲荷にお参りしたいい伝えから、装束榎と呼ばれる。

晦日に再現した「狐の行列」を見て、気にかかった。

「化物で楽しむ江戸狂歌笠間書院刊。

本屋TSUTAYAの元祖、蔦屋重三郎が人気の狂歌師を集めた。時に田沼時代。

場所は、墓場近くのあばらや。仲間が寄り合ってお化け狂歌を一首詠み、はい次の人とやって夜明かしをする。おっかなびっくりで作った、化け物の百物語。

・ばけのかはの 玉藻(たまも)を 狐いただいて
 櫛笄(くし こうがい)と なすの原かも

化けるために美しい藻を頭に乗せた狐は、玉藻のような美女になった。最後には、那須の原で殺生石になったよ。

狐とくれば、美女の化身でしょう、やっぱ。

で、なぜ楠の梢が待ち合わせ場所なのか?

南北朝時代の武将、楠正成が影響してるかな? 合戦で自害した亡霊がさまよう。鬼女に化け、追いつめた一族を追う。

今年は、羊の年。羊もお化けになる。

筒井筒(つついづつ)と詠まれた古井戸の中には、土に宿る羊の怪物がいるのだ。

化け物は、置き土産までする。

・ばけ物の 置きみやげかや 金(かね)だまを
 千両つめし 箱根山ほど

お金は消え去りやすいものである。しみじみ納得する。

ありゃ、これは化け物の置き土産だろうか? 千両をつめた箱がある! 帰っていった箱根山みたいに、山ほどある。

これが百話目。

皆んなでわくわくし、怖がることを楽しむ。これ、祝福してるのかもしれない。

★旅する目玉 竹村京さんの絵

♪旅する鼓膜 [https://www.youtube.com/watch?v=5NLt-mjjEuM:title=アントン・ブルックナー 交響曲 第8番 から 「終楽章」
]